パーキンソン病とは
パーキンソン病は、脳内の神経伝達物質ドーパミンを産生する神経細胞が徐々に減少することで起こる進行性の神経変性疾患です。日本国内の患者数は約15〜20万人とされ、高齢になるほど発症率が高くなる特徴があります。沖縄県内でも医療機関にかかっておられる方は多く、当院でも複数の方の訪問マッサージを担当させていただいております。
パーキンソン病の代表的な症状は四大症状と呼ばれます。第一に振戦(手足のふるえ)、第二に筋固縮(筋肉のこわばり)、第三に動作緩慢(運動の開始や遂行が遅くなる)、第四に姿勢反射障害(バランスを取りにくく転倒しやすい)です。これらは個人差が大きく、進行のスピードもさまざまです。Hoehn-Yahr重症度分類でⅠ度〜Ⅴ度に分類され、当院ではすべての重症度の方に対応しています。
パーキンソン病の治療の中心は、ドーパミン補充療法を中心とした薬物療法です。しかし薬物療法だけでは、筋固縮や関節拘縮の進行を防ぐことは難しく、リハビリテーション的なアプローチ(理学療法、作業療法、訪問マッサージ等)の併用が一般的に推奨されています。
パーキンソン病に対する訪問マッサージの役割
訪問マッサージは、国家資格あん摩マッサージ指圧師を有する施術師が、医師の同意書に基づき、自宅や施設に伺ってマッサージと関節可動域訓練を行うサービスです。パーキンソン病の方への施術では、以下の役割を果たします。
第一の役割は、筋固縮の緩和です。パーキンソン病の代表症状である筋固縮(特に頸部・体幹・四肢の屈筋群の緊張)に対し、徒手によるリラクゼーションマッサージと持続的なストレッチングを行います。これにより薬の効果が切れているオフ期の動きにくさを部分的に和らげ、また日中の活動量を維持する助けとなります。
第二の役割は、関節拘縮の予防と改善です。動作緩慢と筋固縮が長期化すると、関節を動かす範囲が狭くなり、徐々に関節が固まっていきます(拘縮)。一度進行した拘縮を完全に元に戻すことは難しいため、進行前からの予防的アプローチが極めて重要です。訪問マッサージでは、四肢の関節可動域訓練を継続的に行い、拘縮の進行を抑えます。
第三の役割は、姿勢保持と転倒予防の補助です。パーキンソン病が進行すると、前傾姿勢や側屈姿勢が顕在化します。この姿勢の歪みに伴い、腰背部・頸部に慢性的な筋緊張と痛みが生じます。マッサージによる筋緊張緩和は、これらの二次的な痛みの軽減に役立ちます。
第四の役割は、進行期における廃用予防です。Hoehn-Yahr分類Ⅳ〜Ⅴ度に達すると、座位や立位の維持が困難となり、ベッド上での生活が増えます。この段階では、廃用症候群(寝たきりに伴う筋萎縮・関節拘縮・心肺機能低下等)の進行を遅らせることが訪問マッサージの主目的となります。担当ケアマネージャー、訪問医療スタッフ、訪問リハビリのスタッフと連携し、ケアプランの中で訪問マッサージを位置付けます。
期待できる効果
訪問マッサージの効果は個人差が大きく、症状の重症度・進行速度・薬物療法の効き具合によって変動します。一般的に期待される効果を、薬機法・あはき・柔整広告ガイドライン(令和7年2月18日厚生労働省)に留意しつつ、客観的な範囲で記載します。
関節可動域の維持または改善が期待できる範囲としては、施術前と比較して肩・肘・股・膝・足関節の他動的可動域が広がる、または現状維持が継続できる、というケースが多く見られます。当院では月1回、ケアマネージャー様向け報告書に他動的可動域の数値(角度計測)を記載してご提出しています。
筋緊張の緩和に関する効果としては、施術直後に筋固縮が一時的に和らぎ、動作開始がスムーズになるという声をご家族からいただくことが多くあります。ただしこの効果は短時間にとどまることが一般的で、継続的な施術によって日常生活上の動作のしやすさを支える、という位置付けで考えていただくのが適切です。
痛みの軽減に関する効果としては、姿勢の歪みに伴う腰背部・頸部の慢性的な痛みが、施術直後から数日間にわたって軽減するというご報告をいただくことがあります。
本人・ご家族の心理的支えとしての効果も無視できません。週1〜3回、決まった施術者が決まった時間に訪問することで、ご本人とご家族の生活リズムの一部となり、孤立感の緩和、ご家族の介護負担感の軽減に寄与するという側面があります。これは医療的効果とは異なる、ケアサービスとしての本質的な価値です。
施術の内容
訪問マッサージの施術内容は、ご本人の症状と当日の体調、薬の効きの状態(オン期かオフ期か)に応じて調整します。標準的な施術内容を以下に示します。
導入時のコミュニケーション(5分程度)として、当日の体調、薬の服用時間、症状の変化を確認します。オン・オフ現象がある方の場合、施術のタイミングを薬の効きのよい時間帯に合わせて調整します。
マッサージ(10〜15分程度)として、頸部・肩・上腕・前腕・腰背部・大腿・下腿のリラクゼーションマッサージを行います。筋固縮の強い部位を重点的に、徒手による筋肉の緊張緩和を進めます。皮膚の状態(薄くなっていないか、内出血の傾向はないか)を確認しながら、強さを調整します。
関節可動域訓練(5〜10分程度)として、肩・肘・股・膝・足関節を中心に他動的な関節運動を行います。痛みの出ない範囲で、可動域の最大値まで動かす運動を、各関節10〜15回ずつ実施します。日々の継続が重要であり、ご家族にも簡単な自主訓練の方法をお伝えします。
記録と次回への申し送り(3〜5分程度)として、当日の施術内容・本人の様子・気づき事項を施術記録に記入します。月初には前月分の施術報告書を担当ケアマネージャー様に提出いたします。
パーキンソン病の方の訪問マッサージ よくあるご質問
Q. パーキンソン病で訪問マッサージは保険適用されますか?
A. はい、パーキンソン病による筋固縮・関節拘縮等で医師がマッサージが必要と認め、同意書を発行いただけた場合、健康保険が適用されます。1割負担で1回あたり300〜430円程度、2割負担で600〜860円程度、3割負担で900〜1,290円程度のご負担です。往療料も保険に含まれます。
Q. パーキンソン病のどの症状にマッサージが有効ですか?
A. 筋固縮、関節拘縮、動作緩慢に伴う筋疲労、姿勢保持の困難さに伴う腰背部の痛み、進行期における廃用症候群の予防などに対し、関節可動域の維持・改善、筋緊張の緩和を目的として施術を行います。
Q. オン・オフ現象がある時間帯でも施術可能ですか?
A. はい可能です。むしろオフ期の動きにくい状態に対して、関節可動域を維持する施術が有効です。訪問時間はご都合に応じて、薬の効きのよい時間帯やご家族がご在宅の時間帯に調整いたします。
Q. 進行期のパーキンソン病でも対応できますか?
A. はい、対応しております。Hoehn-Yahr分類Ⅳ〜Ⅴ度に達した方ほど、関節拘縮の予防、褥瘡予防の体位交換、筋緊張緩和の必要性が高まります。担当ケアマネージャー・主治医・訪問リハビリのスタッフと連携しながら、ケアプランの中で訪問マッサージを位置付けます。
Q. 介護保険のリハビリと併用できますか?
A. はい、併用可能です。訪問マッサージは医療保険を使用するため、介護保険の限度額には影響しません。理学療法士による訪問リハビリと役割分担しながら併用されている方も多くいらっしゃいます。リハビリ(運動学習・動作練習)と訪問マッサージ(筋緊張緩和・可動域維持)は目的が異なるため、相互補完的に機能します。
Q. 効果はどれくらいで実感できますか?
A. 効果には個人差が大きく、また訪問マッサージは治癒を目指すものではなく症状の進行を遅らせる・現状を維持することを目的としています。1回の施術で大きな変化を期待するというより、週1〜3回の継続施術により、半年〜1年単位での状態維持が見られるケースが多くあります。
Q. 担当の施術者は決まっていますか?
A. はい、原則として担当制をとっております。同じ施術者が継続して伺うことで、状態の変化に気づきやすくなり、施術内容の質が向上します。担当者が急な対応で伺えない場合は、事前にお知らせの上、代わりの施術者がうかがいます。
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パーキンソン病の訪問マッサージをお探しの方へ
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